2015年12月10日木曜日

岸本さんを強く論じていかないと、俳句は先へ進めない(田島健一):オルガン3号

オルガン3号、発売中です!

◆座談会Ⅰ:岸本尚毅の『小』を読んでみた
 生駒大祐×田島健一×鴇田智哉×福田若之×宮本佳世乃
~小見出しより~

○「たかが俳句」

逸脱しているものが主役?

ちょっと情けないような

○何を言っても隙がない

○見ている主体を顕に出してくる

○ペンギン村と死者

○だからそこでとどまる

○延長線上にある型を創造していこうと

○ぜんぜん小ぶりじゃない


◆座談会Ⅱ:田島健一からの質問状
~あなたにとって俳句は「仕事」ですか?~
 青木亮人×生駒大祐×田島健一×鴇田智哉×福田若之×宮本佳世乃

 生駒大祐:むしろ俳句以外のすべてが「仕事」です



今回から、新たに福田若之さんをお迎えしました。

ながれぼしそれをながびかせることば  福田若之

逝く人へ秋晴そびえ立ちにけり  生駒大祐


絵の奥の菊を見つめて未成年   田島健一

tttふいに過ぎゆく子らや秋  鴇田智哉


竹煮草の実のかさかさと電車くる  宮本佳世乃



✵送料込、1冊1000円です。お申し込みこちらまで。
また、葉ね文庫さんにも置いていただいています。

✵年間購読について

・通常購入(1冊単位での購入、頒価1000円(送料込))
・年間購読(季刊4冊まとめての購入、まとめて3000円(送料込))

購入希望の方は、
こちら(organ.haiku@gmail.com)までご連絡ください。

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2015年10月22日木曜日

オルガン3号、もうすぐです

オルガン3号、11月上旬に発行します。
年間購読の方には、11月5日~7日頃お届けできると思います。

✵新メンバーを迎えました。
今回から、新たに福田若之さんをお迎えしました。

✵5人の新作、テーマ詠のほか、座談会2本。ゲストは青木亮人さん。
・座談会Ⅰ:岸本尚毅の『小』を読んでみた
 生駒大祐×田島健一×鴇田智哉×福田若之×宮本佳世乃

・座談会Ⅱ:田島健一からの質問状
 青木亮人×生駒大祐×田島健一×鴇田智哉×福田若之×宮本佳世乃

✵送料込、1冊1000円です。お申し込みこちらまで。

✵年間購読について

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2015年8月11日火曜日

「しっとりと無邪気に」 オルガンを聞くその4 

生駒 大祐

知恵の輪の片方に湧く泉かな 宮本佳世乃



今回の宮本佳世乃の連作に水に関係する語が多く表れることはおそらく偶然ではない。
「夕立」「水族館」「フェリー」「滴る」「水色」「桟橋」etc.
それはもちろん作為も働いているだろうが、
佳世乃が一句を成すとき、あるいは佳世乃俳句が一句に収まろうとするとき、
何か粘度を持った言葉が必要なことは確かだと思う。
それは単純な話で、佳世乃俳句の切れが「つなぎ」を必然的に求めることがその原因だ。
切れとつなぎは定義から行けば矛盾する方向性ではあるが、
「切字に用る時は四十八字皆切字なり。用ざる時は一字も切字なしとなり」と芭蕉が伝えるように、
切れと非・切れは相対的にしか働かない。
その意味で、佳代乃俳句の切れは石鹸玉が伸びて分れるが如くに軽やかでありながらしっとりと水気を孕んだ切れである。




掲句、「に」の後に切れが確かにあるが、同時にその「に」は無機質な金属製の知恵の輪と滾々と水を湛えた泉とを有機的につなぐ。
「片方」という片言めいた言い回しも、佳世乃俳句の輪郭を無造作(であるかのように)に形作る。
ふたつの金属の繋がる完成の瞬間こそがそれらが離れ離れとなる動機を作る、未完と完の往還の宿命をそもそも持つ「知恵の輪」と、
水が入れ替わることで永遠に完成することのない「泉」。

そのか細い性質のリンクをなんと無造作に、あるいは無邪気に佳世乃はつなぐことであろうか。

「オルガン」2号

2015年7月31日金曜日

オルガン 2号 2015 summer

目次

ゲスト:福田若之

座談会Ⅱより

鴇田智哉からの質問状

Q1 あなたは俳句を書くとき、どのような読者を想定していますか?
Q2 読者を想定しない場合はありますか?
Q3 次の問いは、Q1の問いと同じだと考えますか?
   「あなたは俳句を、誰に向けて書いていますか?」


2015年7月19日日曜日

オルガン2号と年間購読のお知らせ

オルガン2号は7月末頃できあがります。
4人の俳句のほかに、座談会2本。ゲストは、福田若之さんです。

◆ 座談会 Ⅰ          
村上鞆彦の『遅日の岸』を読んでみた
生駒大祐×田島健一×鴇田智哉×宮本佳世乃 

◆ 座談会 Ⅱ         
鴇田智哉からの質問状
福田若之×生駒大祐×田島健一×鴇田智哉×宮本佳世乃

テーマ詠は、超能力。


✵年間購読、はじめました。

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2015年5月29日金曜日

「モンタージュ」 オルガンを聞くその3

鴇田智哉
 

春の滝見る往来の畳あり   生駒大祐

春の滝を見ていると、そこに人の往来が見えてくる。
春の滝と往来とは、明るい半透明のけむりのようにある。

そして、その移りかわるけむりのなかに、
畳はくっきりと、いかにもくっきりと水平にあり続けている。

この句を読んでまず、そういう景が浮かんだ。
やがて、回帰、という言葉が私の頭をかすめた。

言葉のモンタージュとして読んでいいのではないだろうか、この句は。

「オルガン」1号より

2015年5月8日金曜日

『君に目があり見開かれ』座談会を終えて

宮本佳世乃


ぱきっとした黄色の、薄くて軽い句集。
活版印刷のようなフォントの句集。
昔の少年漫画のような紙の句集。
なんだか最後に写真が入っている句集。
各章で仮名遣いが違う句集。

2月の座談会のことを思いだすと、私自身「レンアイ句集」という、
表紙の脇に書かれた白い小さいことばに、引っ張られすぎたのかなぁとも思います。
そこに衒いを感じてしまったというか。

座談会は終わってしまいましたが、わたしがいいなとおもった句は、

巻貝の殻に砂金や卒業す
紫陽花は萼でそれらは言葉なり
知らない町の吹雪のなかは知っている
ゆふぐれの蜂蜜ごしに濃き夕日
くらがりに雉のをさまるお昼どき
藻の花へこちらから雨がゆきます
貸しボート左の空が明るくて
煙ごしに祭のほとんどと逢へる
ゆく鳥の目はさきをゆく秋の空
雪雲のまはりの雲のほぐれ果つ
末黒野へ罫線入りの紙飛行機
冷えた手を載せれば摑む手であつた
谷に日のあたる時間や春の鳥

そして、短歌に焦がれているようだと感じた句も。

遠いと声が見えない春の海に来たが
また噓を君が笑つて蛾が傷む
こころ未だぬかずにあるよ花烏賊よ
ほほゑんでゐると千鳥は行つてしまふ
月は春かつての最寄駅に降りず

なかにはページ、もしくは見開き単位で読ませる向きもあったと思うんですが、
ちょっとやりすぎだなと思えるところも。
それは私が、読むうえで無意識になにかに引っ張られたというか、
コンテクストを持ち込みすぎたと言えるのかもしれない。
コンセプチュアルな句集に見せなくても、
章立てはどうするか、句の並びをどうするかなど、
「読ませるための仕掛け」はじつはいくつもできて。
まぁ、コンセプチュアルにするかどうかも含めて、そこが作り手側の醍醐味でもあるわけですが。

句集を編むのは、作者だけが経験しうる、とてもしあわせな時間ということを再認識しました。

あ、最初の話に戻ると、この句集の黄色とか、薄さとか、軽さとか、紙とか、
すべてがバランスが取れていると思ってます。

そうそう、座談会はバレンタインデーでした。なんとなく偶然を感じました。

「映像」 オルガンを聞くその2

生駒大祐



ぶらんこの鎖が空にまつすぐに 鴇田智哉

鴇田智哉の俳句は映像的だ、と言うと、もしかすると反論があるかもしれない。
勿論、鴇田俳句が歴史的な意味での客観写生派の俳句と毛色が違うのはたしかだ。
しかし、それでも僕が鴇田俳句を読むとき、鮮明な映像が頭に浮かぶ。
客観写生派と違うのは、その映像が瞬時にして頭から消えてしまうという点においてである。

掲句もそうだが、鴇田俳句に意味において超現実的な景はほとんど出てこない。
掲句はぶらんこの鎖を描写した俳句、と当然読むことができる。
一瞬おいたのち、ではあるが。
句を読んで鎖が空にまっすぐに伸びた鮮明なその映像を見たのち、
一瞬おいてちゃんと意味を汲み取ろうとすると、その映像はすぐにぼやける。
ぶらんこの鎖は空に向かって伸びているわけではない、という常識によって、
(あるいはニュートンの呪縛かもしれない)
意味解釈回路がその映像を否定にかかる。

そして、句は平凡なぶらんこの景に着地し、
鎖が浮遊して空から伸びているという魅力的な残像のみが残る。

鴇田俳句はだまし絵のように、現実の向こう側を少しだけ見せてくれる。

「オルガン」1号 より

2015年5月1日金曜日

「フラット」 オルガンを聞く その1

生駒大祐


記号うつくし空港の通路を蝶 田島健一

田島健一の俳句は非常にフラットである。
例えば、言葉一つ一つを繋ぐ糸の張力のようなものを考えると、
本来言葉たちの重さの違いによってそれらはバラバラであるはずなのに、
田島俳句のそれは一読不自然なほどに均一だ。
それを、僕はフラットだと表現する。

このことは、田島俳句の持つ切れの問題と深く絡む。
意味上の切れだけを俳句の切れだと考える人には、
田島俳句はしばしば不自然なものに見えるだろう。
(切れが多すぎるor少なすぎる)
掲句を「『空港の通路を蝶が飛んでいる』風景を『記号』に見立てたうえで『美しい』と表現した」
と解釈することは勿論可能だし、もしかすると自然なのかもしれない。

だが、僕はそうは読まない。

僕がこの俳句を読むとき、「うつくし」は「記号」に係り、「空港」「通路」「蝶」それぞれに係り、
さらに「の」や「を」にも係る。
もっと言えば、この句のすべての言葉同士は細い糸でうすく繋がっている。
意味や言葉そのものではなく、言葉の相互の繋がり方のほうを提示するのが、
田島俳句の目的ではないか。

フラットな糸のその純粋なうつくしさ。


「オルガン」1号 より

2015年4月20日月曜日

オルガンについて

息をする、と言う。
息を、と。
でも息と、それをするものとは分けられない。
むしろ、息がする、と言ったほうがいい。
息が、するのだ。

俳句もまた、そうではないか。
俳句を、するのではなく、俳句が、するのだ。

俳句がする、4つのオルガン。




オルガン



田島健一(たじま・けんいち)
1973年東京生れ。「炎環」同人、「豆の木」参加。   句集に『ただならぬぽ』(2017年)

鴇田智哉(ときた・ともや)
1969年木更津生れ。「魚座」「雲」を経て無所属。句集に『こゑふたつ』(2005年)、『凧と円柱』(2014年)、『エレメンツ』(2020年)。

福田若之(ふくだ・わかゆき)
1991年生れ。「群青」。句集に『自生地』(2017年)、『二つ折りにされた二枚の紙と二つの留金からなる一冊の蝶』(2017年)

宮﨑莉々香(みやざき・りりか)
1996年高知生れ。「円錐」「群青」を経て無所属。

宮本佳世乃(みやもと・かよの)
1974年東京生れ。「炎環」「豆の木」。句集に2010年合同句集『きざし』、2012年『鳥飛ぶ仕組み』、『三〇一号室』(2019年)

⚫︎卒業
生駒大祐(いこま・だいすけ)
1987年三重生れ。「天為」同人。「手紙」「クプラス」。

「オルガン」を購入する方法は、2024年9月現在2パターンです。

①直接手にいれる
(札幌)がたんごとん
(新宿)紀伊國屋書店本店
(世田谷)七月堂
(松本)栞日
(中崎町)葉ね文庫
(梅田)梅田蔦屋書店
(松山)本の轍
(福岡)本のあるところajiro

②メールでの通販問い合わせ
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オルガン 1号 2015 spring



目次

座談会から

生駒 恋愛って、あんまり特定しないですよ。ムードは特定しますけど、シチュエーションまで特定しない。
(中略)
田島 たとえば鴇田さんの句集に「レンアイ句集」って書いてあったら。鴇田さんの句だってそう見えてくる。「春風の止んであたまが上にある」とかね(笑)。
鴇田 だから、俳句にとってタイトルとは、それくらいのものだよ。 
宮本 「レンアイ句集」って書いて、手にとってもらったから読まれるなんて安易だと思わない?